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好きなものを語ります。 本宅(http://chickpig.nobody.jp) 整頓中。

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2024 
September 17
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2012 
September 16
乱読キャンペーンで手にとった一冊。
 
 
いかにも『ある程度お年を召した男性が書いた小説ー!』って小説でした。
どっしり骨太で、お固くて、
専門的な部分がこれでもかってくらい綿密で、
感情を抑えた冷静で淡々とした語り口に、
どこか古めかしい情緒を湛えた登場人物たち。
 
特別何かを刺激されたり、続きが見たくてわくわく逸ったり、
登場人物に入れ込んだりすることはなかったけれど、
徐々に引き込まれ、伏線の回収が意外かつ気持ちよく、
最後はしっかりした家具みたいな安定感をくれる、そういうタイプの小説でした。
 
ただしグロ注意。
 

物語序盤は同じ時間軸・異なる土地でいろんなことが展開するので
ころっころ場面が切り替わり、
さらにそれぞれの場所で続々新キャラが出てくるのでちょっと目まぐるしい感じ。
 
しかし、彼らの存在をひとりひとり認知して、それに慣れてきた頃、
散らばっていたパズルのピースが徐々に集まりだし、
舞台も登場人物も一つの場所に集まり始めて、一つの絵を描き出していく。
それぞれの舞台でそれぞれの生活を眺めていた頃は
「これとこれはなんか関係あるの…?」と思っていた事件・人物が、
新たに出てきた事実によってぴたっと繋がる瞬間の戦慄ときたら!

地の文章は極力作者の目を排して、あくまで登場人物目線。
視点となる人物が切り替わると、
地の文の描写や表記の仕方まで変えてきます。
 
ヴェトナム戦争がもたらした負債を始め、
先天的な障害と遺伝子との関係性・遺伝子研究等、テーマはかなり重いです。
当然登場人物も、何らかの傷やハンデ・深刻な状況をもっている。

でもなんか、全員になんとなーく好感を抱くんですよね。
特にヴェトナム帰還兵であり、
帰国後に自分を支えてくれた妻を深く愛していたスネル警部。
兵士として、そして刑事として陰惨な光景を見ていた彼が妻ナンシーを亡くした時、
「天国を安易に信じるには、自分はいろんな現場を見すぎていた」
とか、
「スネルが信じたのは神の奇跡ではない、ナンシーという小さな奇跡だった」
とか、こうして抜き出してみると至極ありふれた言葉なんですけど、
作中で彼の言葉として入ってくるとほんっと沁みるのですよ…!
この人がすっごく好きだったので、最後生き残ってくれてて本当にほっとしました。
涼子と時々連絡とって、優しい老後を過ごしてほしい…
 
中盤から主役として目立ってくる涼子もいい女です。

特に好みでも特別かっこよくもない、ごく普通の登場人物(MOB込)に対して感じる
「なんか嫌いになれない…」程度のそこはかとない好意の正体は、
他ならぬ筆者が彼らを見る目線なのかもなあ…とこの小説を読んでいて思いました。
感情を伺わせないクールな書き方をするけど、外側から穏やかに見守っている。
でも決して介入はしない。フォローもしない。
成熟を感じる、そんな目線。
 
でも

まあ

それはあくまで外側の話で、
物語の中で生きている人たちの人生や時間の進行に慈悲などありません。
つまりわりと簡単にガンガン死んでいきます。
ていうかグエンがどんどん殺して行きます。
そしてグロ注意(2度目)

 
やー…
文章ならグロもホラーも耐性ついてるはずなんですが、
経産婦さんの出産記とかも震え上がっちゃうタイプでして、
妊娠・出産・中絶系はわりとその、具体的に書かれるとめっちゃ怖いんですよー…!
多分あの、俗に言う男性の「玉ヒュン」と同じ感じの恐怖だと思う…
序章の部分なんかは、通勤中に読んでて気分悪くなって已む無く閉じたレベル。
(結局、以降の数ページは読めないまま一章にいきました)
(言い訳ですがこんな読み方する本滅多にないんですよー…!)
 
というわけでそのあたりがウィークポイントな私には
時々なるべく遠くを見るようにして流し読まないといけないシーンがちょいちょいあって、
最初のうちはリタイアしようか悩みました。
でも、そうしてるうちにお話がだんだん面白くなってきてしまって結局読破。
散らばっていたものが集まってきて、じわじわ盛り上がってくる感すごかった。
クライマックスはぐいぐい読んでしまった。
最初の試練(※グロ)に耐えて良かった…!

 
終わり方に関しては、
二つの種は滅んで目前の脅威は去ったけれど実際これからが辛い人たちがいっぱいいて、
沙耶は終始可哀想な役回りだったな…とか
この子がどんなことを思ったのか、この子視点でちょっと語ってほしかった
沙耶のご両親は悲しむだろうな、とか
グエンがああしてまで子孫を望んだ狂おしい衝動についてとか、
なんか勢いでまとめたけどいいの?そこいいの?みたいなところもあったんですけど。

 
でも、涼子のあの最後の伏線回収と
最後の最後の一文に気持ちよさと切なさと救いを見出したので、
細けえことはいいんだよ!って気分になりました。
この方向に傾かされる時点で作者さんの勝ちだと思う。
良かった…苦手な感じにグロかったけど…

 
いかにも男性的な作品もいいなあ、としみじみ思った一作でした。
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