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好きなものを語ります。 本宅(http://chickpig.nobody.jp) 整頓中。

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2024 
September 19
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2012 
September 29
舞台はイタリア。
スランプに陥った有名映画監督は、
彼を取り巻く色とりどりの女たちから様々なインスピレーションを貰い、
新しい映画を作り出す…
 
 
という話ではなかった!!
 
 
ちょうど先々週「バーレスク」を見ていたのでちなみに五つ星、どストライク映画でした
撮り方による見え方の違いを強く感じて相乗効果で面白かったです。

バーレスクの女は、女から見てもかっこいい女。
だから爽快。
NINEの女は、男から見た違う生き物としての女。
だからあれほどまでに美しい。
 
 
そしてこの映画は出来れば最低2回見るのがよろしいかと!
理由は後述しますが、初見より2回目のほうが面白いです。
1回見た時点で返却していたら、多分ここまで評価はしなかった気がします。
スルメです。スルメタイプ映画。

始まって5分でほぼ確信。
「ああ、これは男性の目から見た女性だ」
「しかも、ものすごく女性が大好きな男性が描いたものだ」
と。
 
ストーリーそのものは監督の自伝的作品なので、華やかながらわりとストレートなものです。
映画一徹&女大好きの超有名映画監督が
次回作を期待される中最大のスランプに陥り、
逃避を続けるうちにやがて人生のスランプに発展。
女たちは彼との関係に苦しみ離れていき、
彼は一人になって自分の中の問題に気づかされ、
一度は全てを捨てて隠者のようになるが、やがて再び映画を作り出す…

 
簡単に語ってしまえばこれだけだし、バーレスクのようなわくわくや興奮はないから
最初は「想像してたより地味なかんじだなー」くらいだったんですが。
じわじわと「…あれこれすごいんじゃね?」ってなってくる感のスルメタイプ映画!
 
 
何も浮かばない脚本。
一人撮影セットを眺めて悩む監督の前に、現れる豪奢な金髪の女神。
彼女は彼に腕を伸ばし、優しくキスをして微笑む。
彼女が体をひくと同時に舞台の上に光が灯り、
花が咲き乱れるように女たちが踊り始める――――
 
光を浴び、美しい顔や髪や体を見せつけて歌い踊る彼女たちは
皆、自分のことを好いてくれている。
こちらを見て蠱惑的に、そして親愛に満ちた瞳で笑いかける…
 
やー…マジ女神。
思わず男性の気持ちもわかるってもんですよ!!
自分のことを好いて微笑みかけて誘ってくれる女性って女神だよ!!
しかもとびきりの美女ばっかですからね羨ましい…!
 
この最初のシーンは、
初見ではどの女性がどういう役どころなのかわからないんですよね。
だからこそ、配役を把握して見た2回目が圧倒的でした。
 
最初に彼の映画の女神が暗がりから現れて。
次に、きちんと髪をゆい、控えめな黒いドレスの妻が。
続いて、全てを忘れさせてくれる愛人が蠱惑的な下着と笑顔で誘う。
寝そべる彼女と笑い合って転がりあったあと、
ふと彼が見上げた視線の先には、信頼を寄せる老デザイナーがいる。
子供みたいな笑顔で笑いかける監督に対して、
デザイナーは仕方のない子、とでもいうようにほんの少し首をふる。
 
そして次。現れた堂々とした女性に対して、
監督がいっそ無邪気なほど嬉しげに駆け寄るんですよ!
最初見た時、結構いい歳の中年男性がこういう反応することにん?と思ったけど、
その意味はわからなかったんですよね。
見ていくうちにわかった。駆け寄っていくその相手が誰であったか。
 
監督に向けて手を伸ばした彼女は、亡くなったお母さんなんですよー…!
つまり彼は、死んだお母さんのところに走っていくんです。
子供みたいな笑顔も走り方も一瞬で納得しました。
手を取り、両頬にキスをして、いつか味わったであろう別離の悲しみなど感じさせない、
ただ目の前に愛しい人がいるという表情で笑い合う。
泣くよ!!!(´;ω;`)
 
でも、ママンで終わりではなくて。
また新しく出てきた挑発的な美女に対して、監督はあっさりとママの手を離して向かっていく。
(ここで筋張ったママンの手からするりと離れていく手がアップで映るのが切ない…)
さらに曲調ががらりとかわる。
現れたのはきつい目をしたグラマラスな美女。
監督は、椅子に座ってこちらを睨む彼女の前に膝をつくと、
彼女に向かってコインを指ではじく。
コインをうけとった彼女は、それを大きく開いたドレスの胸元にしまう…
この意味も初見じゃわからないんですよね。
彼女は監督が子供の頃、砂浜に住んでいた娼婦サラギーナ。
多分彼女が、監督の性のめざめの発端だったんだろうと想像できる存在。
 
豪華キャストと銘打つだけあって女性陣もほんと素晴らしいです。
妻役のマリオン・コティヤールって見たことあると思ったらインセプションのモルだし、
ペネロペ・クルス扮する愛人カルラはアホで甘ったるくて可愛くて
監督いいなあ男になりてえ!!ってなるし、
リリーはどっしりとした貫禄と熟女の母性がかっこいいし
ステファニーのダンスも歌も可愛いし、
大らかかつ母親特有の独占欲も入った愛をくれるママンはメイクがエジプトチックで美しいし
そもそも私ニコール・キッドマン大好きだしクリスティン美しいし
サラギーナの大股開きの座り方とかぶっとい太ももとか素晴らしいし!!
 
妻のルイザは、現実では終始清楚なぐらいの服装で、
きちんと結った黒髪の印象も相まってきちんとした印象で。
そして、夫のことを愛しているけど、愛しているからこそ
疲れて何かをあきらめてしまった女性特有の乏しい表情で。
『夫に省みられない妻』って本当こんな花がしおれたみたいになるんだよまんまだよ
それが彼女のショータイムでは一転して、挑発的な衣装で怒りにらんらんと輝いてて、
押し殺された怒りの表現がすっごく生々しいです。
 
可愛さでいったらなんといってもカルラの電話のシーンですよ
甘い。砂糖菓子蜂蜜がけぐらいの甘さ。声がもうすっごい。
「いいこといっぱいしてあげる」「あたしのセラピーに適うものなんてないわ」
こんな愛人誰だってほしいだろっていう理想の極致。
一見の価値ありです、すっごいから。願望と欲望の権化だから。
いやもちろん現実の彼女は面倒くさいんですけどね
 
とにかく終始女性の映し方と描き方が凄まじかった。
純粋な賛美と幻想と崇拝に満ちていた。
男という、決して女ではありえない別の生き物が、
「女」という存在そのものを愛して見つめた視線だと思う。
 
女が見る「女」ではないんだよね、女から見た女はこんな魔物みたいにはならない。
こんな完璧にはならない。
しかも何がすごいって、その視線はあくまでも
「ただ何かをものすごく好きな人が、好意に満ち満ちた目でひたむきにその対象を見つめた視線」
であることを徹底してあるってところです。
性欲スイッチ入った男性のあからさまな目線とか表情とか息遣いだとか、
あと直接的なセックス描写を、そんなもんは余計だとばかりに排除してある。
監督が女たちを見つめるまなざしの優しいこと!
見ていて、えーすごい!と思うような表情ですよ。
 
あの表情だけでも十分に一見の価値はあったと思うぐらい、
慈愛の域に届きそうなレベルの、穏やかな優しい目。
あんな親しみのこもった楽しそうな目で見守られたら、そりゃ女は落ちるわ…
 
多分このグイドはあれです、
一条ゆかりの有閑倶楽部の美童くんタイプです。
心から女性という生き物が好きでたまらないタイプ。
女を食いつぶさないタイプの女たらし。
向き合ってるその一時だけは、自分だけを見ていてくれると
女に錯覚させることが出来るタイプというか。
 
子供のように自分のことしか考えていない駄目な男なんですが、
妻ルイザの誕生日を忘れていて本気で焦ったり、
自殺未遂した愛人のところに駆けつけちゃったり、
目の前にいる相手に楽しそうに向き合って毎回毎回真面目に口説くというか、
ほんとアホなんですけど、ある意味すごく女に対して真面目なんだよ!
そこがアホなんだが!
これだけの女たちに愛される理由もなんかわかってしまう、
そのへんのさじ加減が絶妙…
 
あと、心底健康でバランスがとれていて完全な人は、
何かを作ったりする必要ないだろうから、
映画監督であるところの彼がこんなんなのはすごく納得がいきます。
 
ただ、どんなにひとりひとり真面目に好きでいても、
現実に恋愛関係を続けていくのは難しく、生身の女たちは辛いわけですよ。
ましてや妻としてはたまらんだろうなーと思います。
この手の男は妻帯したらいかん…
 
奥さんの誕生日すっぽかして、会席の場には愛人が顔出して奥さん傷つけて、
機嫌とろうとしても拒否されて、
傷心で飲んでるうちい美人記者に誘われればほいほい部屋までついてっちゃうし、
でもここは駄目だ、と部屋を出てえらいぞ
妻にやり直そうと真摯に語りかけてようやくようやくいい雰囲気になった…と思ったら
愛人が睡眠薬で自殺をはかったという電話がきて。
そんで向かっちゃうわけですよ愛人のところに!
確かに向かわないなら向かわないでひどいんですけど、
しかし冷静に書き出すとホントひどい男だな!
 
映画の脚本はついに完成することなく、愛人とも別れ、妻にも愛想をつかされ(そりゃな…)
映画の女神にも「女神の役からおろして」と言われ、セットは崩し、彼は2年間隠遁生活へ…
そして彼は妻を一番愛していたことに気づき、
「愛を知らない」と言われたことで己を省みて、女も断って、もう一度映画を作り始める…
 
ストーリー自体は地味なんですけど、
日常の中にふっと映りこむ女の幻とか、
各女性のショータイムが素晴らしくてですね…
 
そして、この映画は最後がものすごく好みでした。
 
冒頭と同じ台詞。インタビューに答える監督。
楽屋で「はやく!」と役者をせかして駆け回る子供時代の小さな監督。
そして映画セットの背後から、今まで関わった女たちが次々と入ってくる。

サラギーナが手すりを掴んで体をかがめて監督を挑発的に睨む。
ステファニーがダンサーたちと入ってきてにっこり笑う。
別れて夫のところへ戻った愛人カルラが、彼を見下ろして微笑む。後ろには夫を伴って。
ビジネススーツのリリーが、いつもの表情で背筋を伸ばす。
今まで劇中に出てきた人物が、それぞれ楽しげに入ってきて手摺を掴み、彼を見下ろし、
それから決められていたように位置について動きをとめる。
 
中でも、真っ白なドレスを着たクラウディアが、
入口の脇で見守っていたちび監督に軽くキスしてから
改めて光を浴びてすらりとポーズをとるのが本当に好きです。
嫌いでさよならをしたわけじゃないのだと物語る、あのさりげないキス。
真っ白なドレスを広げた彼女は、気高くて本当に女神のようでした。
 
そして最後、ママンがちび監督と共に入ってきて、堂々と真ん中に構える。
そのたっぷりとした余裕の笑み。
誇らしげで美しい、笑顔の女たち。
「彼の中の彼女たち」があんまり美しくて、涙が止まりませんでした。
 
それは現実には存在するはずのない光景で、
ママンはとうに亡くなっていて、サラギーナも生きていればもう老齢でしょう。
愛人カルラはもしかしたら自分を恨んでいるかもしれない。
ステファニーは誘いほったらかしたままだし。
だけど、みんな彼の中では永遠に美しいまま。
他の誰にも見えない光景。
 
監督も、後ろを振り返らない。
前方の映画セットだけを見つめている。
でも彼女たちは彼が歩んできた人生そのものだから、
もはや感じる感じないとか見える見えないのものじゃないんだろうなと。
その証拠のように、最後ちび監督がひとり階段をかけおりて、
セットを見据える監督の元に駆けていく。
監督はそれを膝に抱き上げる。
目を合わせもせず、当然のように。

そして椅子が上がって行き、
『NINE』とタイトルをうったカチンコが鳴り、
「――――アクション」
 
 
 
素晴らしかった……ここまで詳細を書き出しても、
きっとあの光景の、あの美しさの何一つ伝わらないだろうと思うような
一つの美を描いた作品でした。
あらすじ知ってたって全然関係ないので、興味を持った方は是非その目でごらんになってください。
 
男と女って不思議だよなあ…
対して変わらないような気がすることも多々あるのに、
全く別の生き物だと思う時も同じぐらいある。
永遠の謎です…
 
 2009年 アメリカ
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